NPO法人 川崎市視覚障害者福祉協会

【暮らしの手引き】

暮しの手引き ~創立70周年記念誌第3部

はじめに

視覚障害者の2大バリアは移動と情報のバリアです。人生半ばで視覚障害となった人には、日々の暮しのために新たな情報や生活技術が必要です。しかし、情報の70~80%が視覚からの情報といわれており、目が見えなくなったり見えにくくなった当初は、生活のための情報をえる事自体極めて困難です。
中途視覚障害をお持ちの方の生活の質の向上のために役立つことを願い、視覚障害のある者の立場から、日々の暮しのための情報を紹介します。周囲の方による支援の参考にもなれば幸いです。

第1章 情報アクセスの見取り図
第2章 支援メニューの見取り図
第3章 外歩き基礎講座
第4章 生活技術自主講座
第5章 視覚障害者の活動事情
第6章 視覚障害者の職業事情
■ガイドヘルパー利用技術講座 暮らしの手引き特別付録
■視覚障害者の外出時の行動様式

第1章 情報アクセスの見取り図

 見えない・見えにくい場合に目に代わり、または目を補って、触る、聴くなどの保有感覚を活用します。保有感覚を生かすためにさまざまな用具・機器があり、これらを活用することによりいろいろな可能性を切り開くことができます。

(1) 「文字を読む」の代替手段
・点字を触って読む
・音声を聴く

(2) 「文字を書く、記録する」の代替手段
・点字を書く
・音声を録音する
・データを記録する。(パソコンなど)

(3)「 周囲の環境を認識する」の代替手段
・聴く: 音、声、反響音などを聴く
・触る: 対象物を手などで触る、白杖で触る 、歩行中の道の高低差や材質を足で感じる
・感じる: 空気の流れ、振動を感じる
・嗅ぐ、味わう:かおり、臭い、味をとらえる

(4)「道具・機器を操作する」方法
・形状を触って理解する。
・操作について、点字表記、音声ガイドを利用する

補足説明
文書、書籍などの普通の文字情報(「墨字」といいます)変換の方式と用具
(1)点字への変換
・点筆と点字器により点字を書く
・点字ディスプレイに表示できるデジタル文字にデータ変換する。

(2)音声への変換
・朗読者による録音を再生
・音声読み上げソフトによるデジタル文字情報(パソコン、携帯電話などの画面の文字情報)を読み上げ
・スキャナで活字文書を読み取りデジタル情報化して読み上げ
・活字文書読み上げ装置(文書を音声コード化し、音声コードのデータを機器が識別)で読み上げ
・弱視者の場合、大活字本、拡大鏡 (ルーペ)、拡大読書機、パソコン画面の拡大・白黒反転などの活用

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第2章 支援メニューの見取り図

視覚障害者のための様々な福祉サービスがあります。また、その他社会の各分野で視覚障害者の日常生活を支える支援策、負担軽減策があります。その主なものを紹介します。これらのサービスを利用し、生活の質の向上を図ることができます。
(備考)川崎市の「ふれあい~障害福祉の案内」ではこれらの関連事業や公的な施策、身体障害者が利用できるサービスなどを詳しく紹介しています。印刷物(墨字版)とCD(デイジー録音版)があります。

1 福祉サービス
(1)相談の窓口
福祉サービスを利用するにはまず、身体障害者手帳を取得する必要があります。
川崎市の場合、申請手続きの窓口は、各区の保健福祉センター、地区健康福祉ステーションの障害者担当です。
訓練などの相談は川崎市視覚障害者情報文化センター(情文センター)が受け付けています。電話 044-222-1611
また、身体障害者相談員(視力)として視覚障害者が相談にあたっています。 

(2)日常生活訓練
視覚に障害のある人ができるだけ自立した日常生活をするためには新たな生活技術の習得が役立ちます。このために専門家による1対1での個別の訓練を行っている機関があります。川崎市では「川崎市視覚障害者情報文化センター(情文センター)」が実施しています。原則無料です。問いあわせ・申し込みは同センターまで。
* このような生活訓練を市レベルで実施している自治体は全国的にも少ない状況ですが、川崎市では情文センターの以前から盲人図書館が実施していました。
○情文センターの訓練事業について:
対象者は訓練を必要とする視覚障害者(身体障害者手帳取得していない人も含みます。)
各訓練はその人の必要に応じて行います。
保有感覚、用具機器を活用することによりいろいろな可能性をきり開くことができます。
・コミュニケーション訓練 :点字、視覚障害者用パーソナルコンピューター(パソコン)音声読み上げソフトによりキーボードで操作します)
・歩行訓練
・日常生活訓練: 調理、裁縫、編み物、日常身辺処理等
・各種相談受け付け: 訓練 生活全般 用具 物品の購入 進路等
また、川崎市視障協でも川崎市の委託により盲女性家庭生活訓練を行っています。
神奈川県内では神奈川県七沢自立支援ホームが、視覚障害者に対し入所・通所により、利用者個々のニーズに応じた総合的な自立訓練(機能訓練)プログラムを提供しています。

(3)情報提供サービス(点字と音声)
視覚障害者用に制作された点字図書と録音図書の貸し出しサービスがあります。
サピエ図書館(視覚障害者用のインターネット図書館)には全国で製作されたこれらの点字図書、録音図書のデータが蓄積されています。情文センターに登録して、貸し出しサービスを利用します。
このほか、日本盲人会連合(日盲連)、日本点字図書館なども図書貸し出しサービスをしています。
サピエ図書館の点字図書、録音図書については利用登録者が自らダウンロードで入手することもできます。
*川崎市の「市政だより」は録音版と点字版が希望者に提供されます。「録音版議会かわさき」も希望者に提供されます。川崎市政だよりホームページ版は音声読み上げできるテキストデーターが掲載されています。
*市内各区の市立図書館では「対面朗読サービス」を、希望する視覚障害者に行っています。

(4)同行援護
身体障害者手帳1・2級の視覚障害者は外出時にガイドヘルパーによる支援を受けられます。ガイドヘルパーは外出時において移動の援護をおこない、移動に必要な情報を提供するなど外出の際、必要となる援助を行います(障害者総合支援法に基づくサービス)。
利用には所得により1割などの利用者負担があります。
川崎市での利用には毎年、各区の保健福祉センター・各地区健康福祉ステーションでの手続きが必要で、障害福祉サービス・地域相談支援受給者証の交付を受けます。手続きがおわれば、同行援護を利用できます。 ガイドヘルパー派遣の事業所と契約し、希望日時に動けるガイドヘルパーを紹介してもらい、利用します。なお、安全な利用の注意事項について情文センター訓練部門が希望者に指導する体制をとっています。
このほか一定の条件のもとで、川崎市、障害者生活サポート事業(安心サポート)の代筆代読サービスを受けられる場合があります。

(5)日常生活支援の用具の補助
 視覚を代替するため、聴覚、触覚などを活用したさまざまな用具が開発されています。そのなかで視覚障害者の補装具、日常生活用具として市町村が補助している物品があります。ただし、市町村によって補助内容は異なります。
川崎市での利用にはまず、市役所(窓口は、各区の保健福祉センター・各地区健康福祉ステーション)での申請手続きが必要です。
0 川崎市障害者(障害児)日常生活用具の給付
現在、川崎市において視覚障害者が給付を受けることができる品目は次のとおりです。給付の条件はたとえば身体障害者手帳1、2級限定、家族の状況など、品目ごとに異なります。
原則として費用の1割が自己負担額となりますが、世帯最多課税者の市民税所得割額に応じて、利用者負担上限額が設定されており、所得額によっては全額自己負担となる場合があります。
それぞれについて耐用年数、給付上限額、対象障害区分、年齢区分が定められています。

視覚障害に関する部分の種目(平成28年4月1日現在) 
耐用年数と限度額を記載
○自立生活支援用具:
電磁調理器        6年  41,000円
歩行時間延長信号機用小型送信機 
10年 7,000円
視覚障害者用電卓 5年  50,000円
○在宅療養等支援用具
視覚障害者用音声式体温計 5年   9,000円
視覚障害者用体重計      5年 18,000円
○情報・意思疎通支援用具:
情報・通信支援用具
(パソコンのソフト等)   5年 168,000円
点字ディスプレイ(「ブレイルメモ」)
  6年 383,500円
点字器            5年 10,000円
点字タイプライター      5年  63,100円
視覚障害者用ポータブルレコーダー
(「プレクストーク」)   6年  89,800円
視覚障害者用活字文書読上げ装置
6年 115,000円
視覚障害者用拡大読書器    8年 198,000円
視覚障害者用時計 10年 13,300円
点字図書
点字図書と一般図書との購入価格差 年間6タイトル、24巻を限度としますが、辞書など一括して購入しなればならないものは給付可能。

○その他:
その他市長が認めたもの -  50,000円

*修理 次の品目について耐用年数内に1回、金額は品目ごとに給付額の1割相当額
点字ディスプレイ、点字タイプライター、視覚障害者用ポータブルレコーダー、視覚障害者用活字文書読上げ装置、視覚障害者用拡大読書器
*施設入所者に対しては、利用が制限されている場合があります。

②補装具の支給
利用できる人 身体障害者手帳を持っている人。国の定める品目ごとに限度額と耐用年数があります。
自己負担額  所得(住民税課税)の状況により、自己負担なしから全額自己負担まで
品目ごとの限度額と耐用年数(種類、材質などにより異なります)

○盲人安全杖 
1,650 ~4,400円、 2年 ~4年
○義眼
17,000 ~ 60,000円、 2年
○眼鏡
17,600 ~36,700円、 4年

③点字図書購入費の助成
対象者 市内に1年以上居住(住民基本台帳登録)の身体障害者手帳1~4級の視覚障害者
対象図書 視覚障害者がみずから使用する点字雑誌、拡大文字図書、録音図書など(①の対象となる点字図書を除く)
助成限度額 ひとりにつき年額6万円
問合せ窓口 川崎市障害福祉課 044-200-2653

コラム
川崎市における日常生活用具・補装具の保有状況
保有者がとくに多い品目は、白杖、点字器、視覚障害者用ポータブルレコーダー(「プレクストーク」)です。
(平成29年8月の視障協運営委員22名の調査では、それぞれ 20人、17人、17人が保有)

(6)支援用具・機器
このほか、視覚障害者の日常生活のために使いやすい物品、用具がいろいろあります。
例えば 裁縫用具(縫針の糸通し器)、台所用品小物(計量スプーン、キッチンタイマー)、物差し、音声ガイド付きの血圧計、音声タグ(音声を読み上げるタグで対象物品につけて、読取装置で読み取ります)
携帯電話 画面の文字を読み上げる音声ガイドで電話やメールが簡単にに操作できる機種があります(らくらくホン)。スマートホンにも音声ガイドを聞きながら画面を操作できる機種があります。ただし、操作技術の習得が必要です。
音声ガイド付きの電化製品 メーカーによって機種や内容はさまざまです。また、電化製品の操作部に点字標記のある機器も増えています。
IHヒーター、給湯器、エアコン、音声ガイド付レンジグリル、音声案内付きの炊飯ジャー、 音声ガイド付テレビ、地上波テレビ放送の聴けるラジオ、色判別機、 方位計

(7)医療
○自立支援(更生)医療
給付対象は、角膜移植、白内障手術 原則1割負担。
窓口は各区の保健福祉センター、地区健康福祉ステーションです。

○重度障害者医療費助成制度
1.保険診療分の自己負担額の助成
ただし、食事療養自己負担額と 生活療養標準負担額は助成されません。
2.後期高齢者医療制度(75歳以上対象)による一部負担金の助成。
いずれも区の窓口で医療証の申請手続きが必要です。

(8) 盲導犬給付(視覚障害者補助犬給付事業)
盲導犬の訓練交通費、健康管理費を支給。飼育費は自己負担、窓口は 神奈川県障害福祉課

2 社会の主な支援策
利用条件や手続きなど詳しくはそれぞれの担当窓口にお問いあわせください。
(1)交通運賃の割引
①JR・民営鉄道運賃割引制度
本人が介護者と乗車するとき
第1種 5割 普通乗車券(自動車線は30%)割引、特急券を除く急行券
単独乗車のとき 100キロを超えると割引(自動車線は距離に関係なく割引)
ジパングクラブ特別会員制度(JR特急券などの割引)
男60歳以上、女55歳以上の身体障害者は、2~3割引で特急券などを買うことができます。介護者も同様。年会費を支払い、ジパング倶楽部手帳を提示。ただし、のぞみの特急券、ゴールデンウィーク、お盆の期間、年末年始の期間は対象外。
川崎市の窓口は川崎市身体障害者協会
電話 044-244-3975

②航空運賃割引制度
適用区間は国内線全区間(日本航空及び全日空)です。
本人と介護者。割引率は会社によって異なります。

③タクシー料金の割引
身体障害者手帳提示により1割引きとなるタクシーがあります。

④川崎市の公共交通機関の利用減免
○障害者乗合バス(市バス、民営バス) 料金割引
本人と介護者: バス運賃の5割引き
○川崎市のふれあいフリーパスの交付
本人のみの無料パス
12歳未満本人と介助者 無料パス

⑤重度障害者福祉タクシー利用券交付
タクシーチケットの交付(一定の枚数)
年度毎に申請(ふれあいフリーパス、高齢者フリーパスの人は対象になりません)

⑥障害者有料道路通行料金の割引
視覚障害者が乗車し、視覚障害者の介護者が運転する事前登録した乗用車1台 割引率5割 区役所での手続きが必要
ETC(ノンストップ走行)での割引もあります。
○駐車禁止除外指定車の指定
駐車禁止区域内(法定駐停車禁止区域などを除く)において、指定された障害者本人が現に乗車している車について障害者駐車禁止除外標章(公安委員会から交付される)を掲示します。窓口は警察署

(2)情報通信
①郵送料の無料の郵便物
  視覚障害者用の録音テープなどの録音物または点字用紙を内容とする郵便物(点字図書館、点字出版施設あてに差し出す場合、またはそこから差し出される場合)
郵送料が無料になります。
郵便物の切手を貼る位置に「点字用郵便」と記載

②金融機関の送金手数料の特則
視覚障害者が窓口で送金する手数料は、身体障害者手帳を提示すればATMによる送金手数料と同額とされます。

③NTT電話番号案内(104)無料サービス『ふれあい案内』
事前申込み。
東日本ふれあい案内担当0120-104174
同様のサービスをする他の通信会社があります。

④携帯電話利用料金の割引サービス 通信会社が設定しています。

⑤NHK放送受信料の減免
相談窓口は、保健福祉センターか
NHK神奈川東営業センター 044-712-1100

⑥テレビ放送の音声解説(副音声)
放送会社により副音声付きの番組はさまざまです。

(3)公共料金の減免
水道料金 下水道使用料の基本料金減免
相談窓口は保健福祉センター

(4)社会参加その他
①川崎市内公共施設の利用割引
施設により障害者の利用料減免があります。

②博物館 美術館 演奏会の利用割引
障害者割引のある施設、演奏会があります。条件はさまざまです。
利用時に身体障害者手帳を提示します。(東京交響楽団川崎公演など)

③選挙の投票制度
点字投票、代理投票ができます。

④点字の表示
標識や設備: 階段等の手すり、部屋等の入口、エレベーターや自動販売機等の操作部
消費生活製品: 家電製品、燃焼機器、住宅設備機器、情報通信機器、玩具等の操作部
点字標記があるこれらについて読みやすく誤読の起こりにくい点字表示のためにJIS規格が定められています。

(5)税の減免
障害者本人又は障害者である親族を扶養している人などに対して、税金の控除や減免の制度があります
。 税金関係の相談や申請については、税目ごとに所管する 各市税事務所・小杉市税分室、県税事務所または税務署。
自動車税 自動車取得税の障害者減免
所得税の障害者控除
住民税(市民税・県民税)の障害者控除
個人事業税の非課税・減免措置
(あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業)
相続税の障害者控除など。

コラム
川崎市視覚障害者ボランティア連絡会
(愛称「オブリガード」)の活動

18団体(約500人)がさまざまな活動をしています。
 オブリガード URL http://web-k.jp/oburi/
個別点訳、朗読、グループ活動支援など、視覚障害者の個々の希望に応じて、支援しています。お気軽にご相談ください
また、視覚障害者の社会参加活動にも支援協力しています。

活動分野 グループ名
○録音グループ 5団体
 水車の会、さんざし、ひいらぎ、かざぐるま
みやまえエコー

○点訳グループ 6団体
 芽の字会、スターシックス、ぶれいる、アンダンテ(楽譜点訳)、里の芽会、木の芽会

○拡大写本グループ 2団体
ルーペの会、とんぼ

○デイジー図書グループ 1団体
DAISY川崎

○パソコンサポートグループ 4団体
 川崎パソコンユーザー会、あさおPCクラブ、KPC(川崎パソコンクラブ)、宮前キーボードの会


コラム
デイサービス かみふうせん
主に視覚障害者のために多摩区宿河原で介護保険の通所介護(デイサービス)事業をNPO川崎外出支援センターが行っています。多摩区その他、送迎可能な周辺地域の視覚障害者が対象です。電話044-299-8865

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第3章 外歩き基礎講座
視覚障害者の外出時の基礎的な参考情報です(順不同)。

1.点字ブロック
 道路や公共の建物などに点字ブロックが設置されています。点字ブロックは2種類。誘導ブロック(線状ブロック)では線状の突起が方向とか進めを意味します。警告ブロック(点状ブロック)では面全体の点状の突起が、危険箇所や誘導対象施設等の位置を示します。 点字ブロックの上に、自転車などの障害物がおかれている場合があり、危険に注意しましょう。

2.エスコートゾーン(視覚障害者誘導用道路横断帯)
横断歩道に横断的に設置される点字ブロックで点状横線の両端にそれぞれ点状縦線を一列配置する形態が基準とされています。平成19年に国の指針が示され、東京都での設置は進んでいます。川崎市内では川崎市視覚障害者情報文化センターへの経路に1カ所設置されています。
3.音声式信号機
横断歩道の青信号で、メロディーやチャイム音、「信号が変りました」などの音声が流れる信号機が増えています。押しボタン式信号機の場合、押しボタンをさがす必要があります。

4.車道と歩道のわずかな段差
段差があると、それに杖を当てながら確認して歩くことができます。しかし、車椅子利用にとっては許容できる段差には限界があります。足裏の感覚でわかるように道路の材質を変えている例もあります。

5. タクシー内の点字表記
タクシー客席ドアの内側に、会社名と運転者名の点字表記があります。

6.UD(ユニバーサルデザイン)タクシー
最近普及してきました。介護研修を受けた運転士が乗務していて安心です。
例えば新百合ヶ丘駅南口にはUDタクシー専用乗り場がありますが、常時止まっているわけではなく、呼び出せば5分以内で来てくれます。料金は普通と同じです。
このほかUDタクシー専用乗り場の設置例は 川崎駅の東口と西口、新川崎駅など。

7.駐車禁止除外指定車の指定
重度視覚障害者(身体障害者手帳1、2級、3級の一部)は、自らが利用する自動車を駐車禁止区域に止めることができます。申請して公安委員会から障害者個人用のステッカー(障害者駐車禁止除外標章)を受け使用します(一定の駐車禁止区域をのぞく)。申請窓口は警察署。

8.自動車の音
最近の新しい自動車には要注意。ガソリンエンジンと電気モーターを併用する ハイブリッド車や電気自動車が低速で電気モーター走行しているとき、ガソリンエンジン車のような音が聞こえません。このため自動車の接近に気がつきにくいことがあります。また、騒音低減タイヤの走行音も小さいようなので注意。
対策として国が基準を設けました。「低速走行時の車両接近通報装置」の要件が定められ、普及が期待されます。

9.公共施設の入り口のチャイム音
入り口を「ピンポン」のチャイム音で知らせます。周辺への騒音を気づかって夜間稼働しない施設もあります。

10.ビルのエレべーター
各階の点字表示押しボタンわきに点字で階数、「あけ」「しめ」などの表記があります。音声で到着階を説明する方式も増えてきました。

11.駅のチャイム音と小鳥の鳴き声
 駅ではチャイム音が改札口を示します。また「小鳥の鳴き声」がホームの階段の位置をしめします。
JR線の主要駅などで普及が進んでいます。また、小田急電鉄では、ホームから改札階に上がる階段の処に、視覚障碍者が白杖をついている絵が描かれたスピーカーが設置されていて、そこから小鳥の声が断続的に聞こえるようになっています。小鳥の声は3種類くらいあるそうで、まだすべての駅ではありませんが、川崎地域の小田急の駅には皆ついています。

12.駅内の案内の音声説明
改札口やホームへの通路などの配置を音声で案内します。押しボタンで操作するタイプがあります。利用にはどこに設置されているかをみつける必要があります。これは点字の案内版も同様です

13.駅などの階段手すりの点字表記
階段の手すりの両端に、点字表記で行く先が表示されています。

14.駅ホームのホームドア(可動柵) 駅ホームの線路側に設置されて、電車のドアの開閉にあわせて開閉します。駅ホームの歩行での安全確保に有効です。
例えば川崎市内では、東横線の3駅に設置されていて、田園都市線、小田急線の駅については順次設置される予定があります。

15.駅ホームの内方線(ないほうせん)付き点字ブロック
ホームの警告ブロックの内側に設置される誘導ブロックで、線路側とホームの中側を区別します。ただし現状では、すべてのホームに設置されてはいません。

16.駅のトイレ
 個室の水洗ボタン、ロール紙の位置などの標準レイアウト(JIS)がきまっていますが、普及はこれからの課題です。
不統一なレイアウト、センサー方式の水洗ボタンには要注意。利用前に配置を確認しておくとよいでしょう。設備配置についての音声ガイドの普及も望まれます。

17.鉄道の券売機の音声ガイド
 鉄道の駅の自動券売機はタッチパネルの操作が中心ですが、音声ガイドのある押しボタンがあります。まず左下の*ボタンを押して音声案内にしたがい、押しボタンを操作し、自分で切符購入やカードチャージができます。操作の取り消しボタンは左側中ほどに、その近くにある動かせるカバーのついたボタンは係員呼び出しボタンです。なお、連絡切符や精算などについては券売機では、音声での操作ができないものがあります。その場合は係員呼び出しボタンが役立ちます。

18.金融機関のATMの音声ガイド
銀行や郵便局などのATM現金自動預け払い機では、音声ガイドにより現金の引き出しや預け入れができます。
ATMのタッチ操作パネルの左側に電話のような受話器があります。この受話器の内側中央に横3つ縦4つの押しボタンがあります。押しボタンの配列は、電話と同じです。この受話器からの音声ガイドにより操作します。暗証番号や金額などを他人に知られることなく操作できます。

1.受話器を耳にあてます。受話器から、引き出しは1を、預け入れは2をおしてください、などの音声ガイドがあります(ガイドは金融機関により異なります)。 残高照会、通帳記入ができるものもあります。
この音声ガイドでは、送金の操作はできません。また、引き出しは紙幣のみです。

19.紙幣の判別
・紙幣には触覚でも判別するための識別マーク、ホログラムがついています
例えば5000円札の表左下には、識別マーク八角形のつるつるした部分があり、これを触って、5000円札とわかります。
しかし、使用済みの紙幣では識別しにくくなるのが実態です。
また、今の紙幣の色、デザインは弱視者にはかなり識別が難しいようです。
このため、紙幣の横幅が1万円札160㎜5000円札156㎜、2000円札154㎜、1000円札150mmと差があるので、これを利用するのが一番確実です。横幅を判別するための簡単なガイド用品もあります。
硬貨は大きさと縁(ふち)のギザギザの有無で区別します。ギザギザのあるのは5百円、百円、50円。縁がなめらかなのは10円、5円、1円。そして穴のあるのが50円と5円。あとは大きさと厚みで判断します。ただし10円硬貨については以前の発行のギザギザのあるものがまだ流通しており、たまにまぎれこんでくる可能性があるので要注意です。 なお、紙幣判別専用機、パスモカードなどの残額読み上げ機が開発されていますが、やや高額です。

20.財布のなかのお金の見分け方
紙幣は、財布の中でわかるように例えば千円以外はたて折りか、横折りにするとわかりやすい。また、外出時は千円札だけ持って行き。他の紙幣が入れば折り方を変えて区別するという方法があります。
小銭入れには、中を2区分や4区分し、硬貨を種別でわけて入れることができるものがあります。例えば2区分の小銭いれでは硬貨は500円と100円を一つのところに入れ、10円と50円以下は別のところに入れて、支払う時に出しやすくしておくというやり方があります。

21.自筆の署名用にサインガイド
大中小や大小のサイン用の枠を設けたラミネート加工紙などで作られているサインガイドがあります。自筆サイン用に便利です。
たとえば役所の窓口や金融機関などで代筆に応じているところでも、サインだけは自筆を打診される場合があり、このサインガイドのどの枠に署名するかを指定してもらえば、対応できます。
このサインガイドは、お札の長さや効果の大きさを判別するのにも使えますので、札入れに入れておくと便利です。

22.くぼみ付はがき
官製はがきの表面からみて下がわ中央左よりに小さな「くぼみ」があるはがきで、このくぼみによって、はがきの表裏と上下を区別できます。
このはがきは、すべての郵便局に常備されてはいないので、常備のない局では取り寄せを依頼します。

23.はがきガイド
はがきに文を書くためには、「はがきガイド」が役立ちます。細長い枠を並べ、ラミネート加工紙などで作られています。

24.クロックポジション(時計文字盤による説明)
方向や机の上に置かれたものの位置などを、時計文字盤にみたてて説明してもらうと、わかりやすい。例えば10時の方向、3時の位置になど。

コラム 指示語の問題
 これ、それ、こちら、あちら等の指示語は、言われても理解できません。
物の位置を実際に触らせてもらうか、10メートルほど前方に、右の方向になど具体的に話して貰うことが必要です。
 
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第4章 生活技術自主講座
視覚障害者の生活技術情報を例示的に紹介します。個人の生活技術は、身体能力や生活環境などによって、有効性、快適性などに違いがあると思われます。基本的な生活技術の習得のためには専門家による「日常生活訓練」が役立ちます(第2章参照)。

1.手を上手につかう
家庭内での日常動作では、安全確保のために、さまざまな場面で手をつかうことが有効です。たとえば、前にかがむときは、手で顔面を守ります。

2.「手測り」
例えばじぶんの親指と小指をいっぱい広げた時の長さが何センチとわかっていると、外でものの長さを測る時にメジャーの代わりになります。また、普段から卵一個の重さや中ぐらいのじゃがいも一個の重さを何グラムくらいと知っていると、外で大体の重さを量る時に役立ちます。

3.物の置きかた、しまい方
置き場所をきめておく。手にしたものは、かならず、もとの置き場所に戻す。 いつも使うものを他の人が無断で動かすと、あとで見つけるのがたいへんです。他の人には「ものを動かすときは、動かしたことを告げるように」と日頃から話しておきます。

4.とびらの開閉
 部屋の扉は、引き戸、開き戸とも、完全にあけるかしめること。収納の扉も同じです。中途半端にあけておくと、気がつかずにぶつかることがあります。 ほかの人にも、とびらの中途半端な開け閉めをしないように、日頃から話しておきます。とびらは引き戸の方が比較的安全です。

5.物に印
物に触ってわかる印をつける、たとえば、傘の柄に輪ゴムなどを巻いておく。

6.点字テープとシール
物に貼り付けることができる透明な点字用テープがあります。 書類、箱、CDケースなど、いろいろな物に点字を書いて貼り付け、識別します。 ほかに、貼って、触ってわかる目印として 透明凸点シール、直径4ミリ×高さ0.2ミリ(薄型)、直径5ミリ×高さ1.5ミリ などがあり、二つ折りの携帯電話のボタンをはじめ、教科書やノート、パソコンのキーボードや家電製品のスイッチ等にはりつけて目印とします。

7.靴の区別
靴は外で脱いだ時など他の人と区別できるように、洗濯バサミなどではさんでおく。特に男ものは靴の形が似ていて間違われやすいので注意。

8.ご飯を炊くときの水加減
方法1 計量カップでお米と同量の水が基本です。その上で水加減を、炊きあがりの固さの好みにあわせて調整します。
方法2 洗った後の米に手のひらを平らに置き、なかゆびの付け根あたりに水がかぶさるくらいの加減にします。この方式だと量の多少にかかわらず、おいしく炊けます。微妙な水加減は何度か炊いてみて自分なりのものを会得します。

9.いため物などの調理
油の量は熱したフライパンに少し高いところから油を注いで、音で量を判断します。 加熱時間の判断は、加熱中の音を聞きながら変化を感じ、おいしそうな匂いもまた一つの目安とします。 煮物なども音と匂いで煮え加減を判断します。

10.調理時間のタイマー
タイマーはいろいろと便利ですが、とりわけ料理の時は、タイマーを上手に利用するとよい。 たとえば麺類をゆでる時など、 ゆでる時間のわかりにくいものは、タイマーを使いながら、麺の少しを取って食べてみるのが一番。何回か試して良しとなったら火を止めます。

11.調味料の使用
調味料は、いきなり鍋に入れず、あらかじめ調合して加えます。計量スプーンも使いますが、味見をするとわかります。

12.台所用品
日本盲人会連合や日本点字図書館で、生活に役立つ便利な台所用品をいろいろと販売しています。安価なものもあります。 たとえば計量スプーンやはかり、弱視者用の黒いまな板(白いものをきる時に目立つ)。
 
13.歯みがき
・チューブいりの歯みがきの使い方は、歯磨きを指先に適当な量取って口にいれてから歯ブラシでみがきます。
・液体歯磨きやマウスウォッシュを使って歯を磨くと便利です。少量を口に含み、歯ブラシを口に入れたら、口を閉じたまま歯を磨き、終わったら、液体を吐き出します。ゆすぐ必要はありません。

14.洗濯
靴下などばらばらにならぬよう、左右の物をクリップでとめるなどひとまとめにして洗います。靴下の材質、長さにもよりますが、干す時にも左右をまとめてピンチしておくと、しまいやすい。靴下がバラバラにならぬよう、一方を他方の中に入れて洗うというやり方もあります。

15.衣服の仕分け
仕分けはなかなか大変です。同じ形、材質で色違いのものがとても困ります。
あらかじめ糸印などを付けておくのも良い。同じような形のTシャツなどは洗濯後、色や形をメモした点字シールを貼った衣類ビニール袋に入れて箪笥にしまう。ハンガーにかけて収納する場合、服などを買ったときについているタグに、やはり色や素材などのメモを点字で打って、ひもでハンガーにつるしておく。洗濯後、同じハンガーにかけなおす。あらかじめ情報を音声入力した音声タグをつける方法もあります。

16.掃除
汚れやほこりは手や指で触れればわかるので、こまめにふき取ります。階段は雑巾で拭いた方がきれいになります。埃とりのブラシなどもあります。小さな手ぼうきで部屋の隅の汚れなども掃き出して掃除機で吸い取ります。
そうしていてもたまには晴眼者に確認してもらうといいでしょう。

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第5章 視覚障害者の活動事情
視覚障害者の多様な社会参加活動について主に川崎市在住、在勤の人の事例を中心に紹介します。視覚に障害があってもそれぞれが自分の条件にあう活動を見つけ楽しんでいます。活動のための外出に手助けが必要なときは、同行援護制度によるガイドヘルパーを利用できます。

1 活動分野
*印は 視障協も行っている活動です。

(1) 読書
朗読版と点字版の図書、雑誌

(2) 趣味・娯楽
手芸・編物*、華道*、茶道*、折り紙*、料理*、いきいき体操*、囲碁*、川柳*、詩吟*、陶芸、園芸

(3) スポーツ
STT(サウンドテーブルテニス)*、FVB(フロアバレーボール)* ボーリング*、グランドゴルフ、ブラインドテニス、フライングデスク、ヨガ、スポーツジム、水泳、タンデム自転車、ウォーキング、マラソン(伴奏者と)、登山・ハイキング

(4) 音楽・芸術
カラオケ、 民謡* 、踊り、ダンス
楽器演奏(ピアノ、アコーディオン、ハーモニカ、ギター、三味線、オカリナ)
合唱、音楽鑑賞、演奏会鑑賞、映画鑑賞(音声解説つき)

(5) 技術その他
パソコン、インターネットサーフィン、アマチュア無線
ゲーム(視覚障害者用のトランプ、オセロなど) 、競馬
) (6) イベント参加
旅行*、まつり*、交流会*、会合
) (7)視障協事業(第1部参照)
広報及び啓発活動: 会員による視覚障害についての啓発、講演活動、
親睦・交流・研修などの事業の実施:川崎市視覚障害者相互激励大会ほか、趣味娯楽、スポーツ、音楽・芸術、イベント参加
社会参加及び制度改善の取り組み:支援策改善要望への意見、バリアフリーの街づくりへの参画、当事者団体としての各種大会への参加など

2 関連情報
(1) 読書
音声情報誌:川崎市では 朗読ボランティアグループの水車の会 かざぐるま、ひいらぎ、さんざしがそれぞれ、定期的に地域の情報を掲載した「音声情報誌」を制作し、希望者に貸し出ししています。

(2) 趣味・娯楽
アイメイト:市内の視覚障害女性グループが手造り小物を作っています。作品を地域のイベントにも出店しています。

(3) スポーツ
登山:六つ星山の会は長年、晴眼者のサポーターとともに視覚障害者が山歩きを楽しむシステムを運営しています

(4) 音楽・芸術
カラオケ:視覚障害者のカラオケ同好会「メイフレンズ」が毎月北身館で、例会をしています。
楽器演奏:市内でオカリナグループその他、楽器演奏グループが活動しています。
映画鑑賞(音声解説つき):さまざまな方式で行われています。

・音声解説付きDVD
・アートセンター(麻生区)音声解説付き常に上映(あらかじめ録音したものを、映画と同期させて流す方式)
・UDキャスト方式(スマートホンに必要なアプリケーションをいれて利用)
・実況方式 イオンシネマ(麻生区)、シネチッタ(川崎区)、横浜ライブシネマ)、その他都内の何か所かの映画館でも
演奏会:東京交響楽団の川崎公演(年5回)は障害者割引(半額)と点字プログラム(視障協作成)を用意しています。

(5) 技術その他
パソコン:視覚障害者と晴眼者が参加する音声読み上げソフトを活用するパソコンクラブ(川崎パソコンユーザー会、KPC、あさおPCクラブ、宮前キーボードの会)が 市内の南部、中部、北部でそれぞれ例会を開いています。

(6) イベント
旅行、イベント
各区の身体障害者協会、身体障害者団体協議会が日帰り旅行を主催しています。
オブリガードのボランティアグループが日帰り旅行、交流会、朗読を楽しむ会などを毎年開催しています。
(例)水車の会主催、さんざし主催の日帰り旅行、ひいらぎ主催、さんざし主催の交流会
視覚障害者を対象として国内・海外のツァーを旅行会社が主催しています。
(例) 「チームコム」の主催旅行、「クラブツーリズム」の主催旅行と視覚障害者自動車運転体験ツァー
川崎市情報文化センターが「 センターまつり」をオブリガードと共催で毎年開催し、視障協も参加協力しています。また、 同センターは視覚障害者を対象とする読書会や文化イベントを開催しています

コラム 参考 他の地域での社会参加活動(例示)
将棋、グランドソフトボール、フリークライミング 

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第6章 視覚障害者の職業事情
川崎市に在住、在勤の人の例を中心に紹介します。

1 三療(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師)
視覚障害者の就労については あはき業従事者が多くを占めてきています。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律でその資格が法定されています。法律では資格を得るのは原則高卒以上となっていて、あはき師になろうとする人は、文部科学省管轄の盲学校または厚生労働省管轄の養成施設で3年または5年の教育を受けます。所定の課程を修了し国家試験に合格すれば国の免許が交付されます。若年の新卒者のほか、中途視覚障害者で所要の課程を学び国家試験を受験する人もいます。
 免許取得後の有資格者はさまざまな形で就労しています。
自宅で自営の鍼灸院、鍼灸マッサージ療院を開業し、30年、50年と働いている人がいます。また、治療院に勤務している人、訪問マッサージに従事する人、医療機関の整形外科、リハビリテーション科でマッサージなどの施術をする人がいます。比較的新しい就労形態として、企業において従業員を対象にマッサージを行うヘルスキーパーとして勤務してる人が増えています。さらに、介護保険のデイサービス施設で機能訓練指導員として勤務している人がいます。
これらの業務における施術対象者データの管理については人によりさまざまな方法を 工夫しています。例えば、管理するデータの形態として、点字のカルテ、パソコン拡大画面・パソコン黒白反転画面・パソコン音声ソフト・アイパッド音声ソフトにより作成する電子データ、音声タグを貼り付けたシートの音声データがあります。
なお、川崎市においても技能系職員で市の病院やリハビリテーションセンターに機能訓練師として採用されているケースがあります。

2 その他の職業
以前は視覚障害者は読み書きなどの事務的な作業が困難だと言われてきましたが、現在はパソコンに音声ソフトを組み込むことによりかなりの程度事務をこなすことができ、事務職として採用されるケースが増えてきています。
川崎市では市役所と教育委員会に全盲の人が働いています。教育委員会では肢体不自由者の特別支援学校に教師として弱視者が勤務しています。市役所には弱視の人が事務系として20から30名が採用されていると思われますが実数は把握されていません。
川崎市の施設関係では川崎市視覚障害者情報文化センターで二名の視覚障害者が視覚障害者の生活訓練担当として働いています。
市内には大手のITメーカーがあり、そこでプログラミングの仕事をしている人もいます。その他メーカーで開発や研究、総務などいろいろな事務系の業務を行っている人はある程度いると思われますが具体的な人数はわかっていません。視障協の会員でもメーカーに勤務している人がいます。
また障碍者に対し職能訓練を施す作業所を経営している人がいます。
そして、病気や事故で失明しても、研修として歩行訓練を受け、音声パソコン操作による文書事務を習得して、職場復帰するケースも増えてきています。また、視力を使わずに職務の遂行が可能な部署に配置替えをして仕事を継続する継続雇用が実現しているケースもあります。
以前視障協の会員だった人の例では、海上保安庁に職場復帰し、海難審判庁で録音した議事録をパソコンで文字データに直す仕事をしていました。

3 障害者雇用率による就労の促進
障害者雇用促進法では、障害者に対する採用等の差別の禁止を定めるとともに「すべて事業主は、身体障害者又は知的障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで身体障害者又は知的障害者の雇入れに努めなければならない 」(第三十七条)と定めています。
平成29年度は民間企業は50人以上の従業員がいる場合は2%、公務員においては2.3%、都道府県等の教育委員会で 2.2%の障害者を雇用する義務がありました。この障害者雇用率は平成30年の4月から、民間企業は45.5人以上の従業員がいる場合、2.2%、公務員においては2.5%、教育委員会2.4%に引き上げられています。ただし、視覚障害など個別障害種別の雇用率の定めはありません。
この定められた障害者雇用率に満たない場合は企業は障害者雇用納付金を支払う仕組みで、雇用率達成を促しています。
今後も「障害者雇用促進法」や「障害者差別解消法」により視覚障害者雇用がさらに進むことが期待されます。

コラム
認定NPO「タートルの会」
(東京都新宿区四谷本塩町 日本盲人職能開発センター内)
タートルは、主に中途視覚障害というハンディキャップを乗り越えて働く、働き続けることを目標として設立された団体です。会員の体験をもとに、視力低下によって仕事を続けることに悩みを抱える方の相談・支援を長年続けています。
電話相談用連絡先 03-3351-3208
連絡用メール mail@turtle.gr.jp

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■ガイドヘルパー利用技術講座 暮らしの手引き特別付録

川崎市視覚障害者福祉協会は、同行援護の安全・安心な利用について同行援護の利用者のための研修会を平成28年8月28日に北部身体障害者福祉会館で開催しました。
 講師は川崎市視覚障害者情報文化センター (訓練担当) 中村透氏です。
 以下、講演の内容です。
 なお、文章表現は 視障協の庶務の責任でまとめたものです。

1.同行援護利用時の基本の姿勢

白杖は持ってほしい。
※以下、右手で白杖を持つときについて説明。左手で持つときは左右が反対になる。

利用者は左手でガイドヘルパーの右腕の肘より少し上に触る。

手は親指と他の指による輪の形でガイドの腕をはさむ感じで触る。

腕の脇を締め、肘は直角に曲げる。できるだけこの姿勢をくずさない。

利用者はガイドの半歩後ろを歩く。

この姿勢により、ガイドの左右 上下への動きがわかる。

なお、身長の差から肩や肘を触るときも基本は同じ。
※ガイドは脇を締めて、右腕をだらんとして手を曲げない。

脇が空いていると、二人幅よりも横幅が大きくなるので、特に左折のときに大回りになり、利用者の右肩が人や物にぶつかる危険性が増す。
※利用者がガイドの鞄を持って(触って)歩くのは、ガイドの動きが伝わりにくい。

利用者は安全第一で考えると 両手が空いている方がよい。

なるべくリュックを背負う、またはショルダーバックを肩からたすき掛けする。

2.白杖の持ち方

水戸黄門様の握り、または、鉛筆を持つ形での握りの二種類のどちらかとする。
※なお、ひとり歩きのときは握手の握りで杖を前に出すが、この方法は同行援護のときは適当ではない。

一般的な白杖の振り幅は、身体の右外側は コブシ一つ幅まで、左は身体の幅まで。

同行援護のとき、ガイドの前に白杖を振り出さない。白杖は振らないのが基本。

白杖は、段差の確認など、必要に応じて使う。
※たとえば電車の乗り降りではホームの端、端と電車との隙間、ホームと電車の床との段差を探って確認する。

3.具体的な場面

(1)階段・段差(上がるとき、下るとき)

ガイドが段差を知らせる。「もうすぐ」ではなく、具体的に「1メートル位先」など。

ガイドは階段の直前でいったん止まる。その位置は利用者が少し前に 足をだせば階段のへりに足が届くくらいのところ。

ガイドが上りか下りかを言って動き始める。そのときに利用者は段を確認する。足を滑らせて、または 白杖で確認する。

(2)エスカレーターの乗り降り(上り下りとも同じ)

エスカレーターのベルトに触る。

ガイドと利用者は一列に並ぶ。基本的には上りはガイドが後ろに、下りはガイドが前に。
*横にならぶと危険。

左側のベルトに触る。ベルトは、触るだけで掴まない。

白杖は立っている段の一段前の段に置く。

降りるときは、ベルトが斜めから水平になってくるのを感じるとともに、エスカレーターの前の段に置いた杖の先がエスカレーターを引き込む端に当たったら、一歩前に踏み出す。

(3)手すりへの触り方の基本動作
※手すりのほか、ドアの取っ手、電車に乗る時のドアの端、いすに座るときの背もたれなど、触る必要があるときの動きについても、基本は同じ。

利用者が右手の杖を左手にもちかえ、ガイドの腕と杖をまとめて持つ。

ガイドは前を向いたまま右手で 利用者の右手を持って手すりに誘導して触らせる。
※こうすれば、利用者の手を泳がせる動作はない。
※ガイドが向かい合って 左手で手すりへ誘導するのは進行の方向から変わってしまう動きとなり、適切ではない。
※利用者が杖をもったままの手で手すりを確認するのは他の人に対して危険な場合がある。
※利用者がこの基本動作の誘導方法を知っていればそうするようにガイドに頼むことができる。

(4)道幅の狭い場所の通過

利用者とガイドの間でやり方を明確にしておく。
基本的には次の方法がある。

ガイドが狭い場所と知らせて、右腕を後ろに伸ばし、一列になる。

利用者は 左手を伸はし、ガイドの足を踏まないようにする。

(5)傘の持ち方

2人ともなるべく濡れないためには、近づいていること。

まず利用者が傘の下を持ち、ガイドはその上を持つ。
※ガイドが傘を持ち、その腕を利用者が「基本的な姿勢」で腕に触り半歩後ろを歩く歩き方では、 利用者が濡れる割合が大きくなる。
※ガイドが左手の傘を利用者にさしかける方法ではガイドがぬれてしまう。

なお、雨具の工夫として、大きめの傘、レインコートの利用がある。

4.気持ちよく同行援護を利用するために

(1)お金の管理

トラブルを避ける配慮から、利用者が極力自分で管理すること。

お金をガイドに預ける場合はやり方を注意する。たとえば少額を預ける。5千円、3千円限定など。そして、手渡す時には中身をお互いに確認し、 領収書をすべて渡してもらう(財布にいれてもらうなど)。

(2)食事

利用者はガイドに安易にご馳走はしないこと。
いつもそうと期待されては関係がぎくしゃくする。
※なお、同行援護の事業所には食事についてのルールもあるはず。

(3)荷物運び

利用者は自分で持てる物を持ち運ぶこと。

買い物などでガイドに荷物を持ってもらうのは当然なことではない。人情でというこ とがあるとしても、同行援護の仕事ではない。ガイドヘルパーはホームヘルパーとは ちがう。

5.補足説明

(1)歩行速度

ガイドはついゆっくり歩きがちで、利用者はゆっくり歩くことに慣れてしまいがちなので、要注意。

利用者はもし体力的に余裕があれば、少し速くあるいてほしいと伝えること。そうしないとせっかく外出していても運動にならない。

たとえば通常街中で通勤などであるいているスピードで歩いてみるとよい。ものすごく速く歩いているのがわかるはず。

歩き終わってちょっと筋肉が張ったくらいの動きを繰り返すと、筋力がおちない。

(2)基本の重要さ

自分の歩行の癖について それがいちばんいいとはかぎらない。

中高年は、いざというときの対処の反応が体力的に落ちている自覚をもち、基本に忠実に動いておくのがよい。

(3)ファーストコンタクト(ガイドによる最初の接触の標準的な方法)

ガイドが手の甲で 利用者の手の甲にふれる。これで、利用者はガイドに対して立っている位置と方向がわかる。
※手のひらで触らない方がよい。

6.まとめ

(1)共通認識

誘導の仕方について、利用者とガイドが共通認識をもっていることが大切。

気持ちよくつきあうために お互いに話をしておく。
姿勢、歩く速度、声かけのタイミングなど、こういうときはこうしてほしいとお互いにルールをきめる。 その過程でいろいろと試してみる。
※とくに家族には「腕を触る基本の歩き方」も知らない人が多い。

(2)利用者の心構え

歩行中利用者はすべてをガイド任せにしないで、安全のために自分でできることはする。

相手が安全上完全な誘導をしてくれると期待し過ぎてはいけない。

(3)歩行訓練の勧め

単独歩行でなく、同行援護を利用しての歩行についても歩行訓練を受けておく方がよい。
たとえば誘導のされ方などを1、2回受けるだけでも、同行援護利用の安全性は格段に高まる。

この歩行訓練サービスは川崎市視覚障害者情報文化センターが川崎市内の視覚障害者に対して提供している(無料)。 希望により受講者の自宅まで訪問がある。是非気軽に相談してほしい。
電話 044-222-1611
※白杖についての相談もできます。

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■視覚障害者の外出時の行動様式

1.基礎知識編

(1)白杖(はくじょう)
 視覚障害者の持つ白杖には周辺の事物の存在を知るセンサー、衝突からの防護、視覚障害者であることの 目印(シンボル)の3機能があります。世界共通です。使用中の白杖には触らないようにしてください。
(2)声の懸け方
 迷っているらしい視覚障害者を街で見かけたときは「(なにか)お手伝いしましょうか」と気軽に声をかけてください。
(3)誘導の仕方
 誘導手引きの基本は、自分の肩、二の腕、肘(視覚障害者の身長との相対的な関係で最適な位置を視覚障害者は選びます) を触らせることてす。視覚障害者の手や腕をひっぱったり身体を押したりすると、視覚障害者がバランスをくずされてしまい危険です。

2.環境編

 視覚障害者のためのさまざまな設備がありますので、その役割を理解して利用がしやすいように配慮してください。
(1)点字ブロック(誘導ブロック)
 点字ブロックは歩行時の道標です。
 その上に自転車や看板などを置かないでください。
(2)駅の身体障害者用トイレ
 一般の方の目的外使用はご遠慮ください。

3.情報編

見える人なら誰でもわかる周辺環境の情報を説明してください。
(1)横断歩道
  交差点で音響式信号がない場合「信号が、青になりました」などと
 説明してくれると安心して横断できます。
(2)電車での空席、吊り革や手すりの位置
  もし空席があれば教えてください。また、元気な視覚障害者でも
 手すりなどの情報は役立ちます。
(3)ソノ他の事例
  わからないので言葉をかけていただくと助かります。
 ■エスカレーターの上りと下りの区別
 ■横断歩道の押しボタン式信号の押しボタン位置
 ■電車の開閉ドアの位置 ■バスの乗降口 ■バスの降車押しボタン

4.対話編

支援の気持ちで接触される方へ。接触のやり方にご配慮ください。
(1)たちどまっている人への接触
 いきなりさわられると驚いてしまいます。まず声をかけてください。
(2)人込みでの話しかけ
 混雑した場所や電車の中などで、支援の気持ちで視覚障害者に声を
 かけていただいても、自分に向けられた声かわからず応答しないでいる
 ことがあります。
 そのときは、まず発言者は、視覚障害者の肩に軽く触れるか
 肩を軽く叩いて、ご自分の存在を知らせてください。
(3)説明の仕方
 指示語はわからないので、使わないでください。
  (例)それ、あちら、こんな、少し先。
 説明は具体的にしてください。
  (例)右へ、 5メートルほど前に、時計の 10時の方向に、6時の位置に。
(4)物の移動
 視覚障害者の置いた物を動かすとき、置くときは一言声をかけてください。
 視覚障害者は自分の手近に置いた物が動かされると見つけられません。
 また、お茶などを卓上におくときは声をかけて注意喚起してください。
 気付かない視覚障害者が手で器を倒してしまうことがあります。

5.補足編

 視覚障害者が苦手なものを例示します。
 ■大音量のBGM ■工事騒音 ■激しい風雨の音 ■電光掲示板
 ■テレビの緊急テロップ ■機器の液晶画面 ■無音で近づく電気自動車
 ■歩道にのりあげ駐車の自動車 ■その横からとびでているバックミラー
 ■大きな道路の長い横断歩道(エスコートゾーンのない場合)

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暮しの手引き ~創立70周年記念誌第3部 終わり