矢上川の植物 ★ミクリ★

ミクリ学名はSparganiaseaeといい、ギリシャ語でベルトを意味する言葉からきている。

線形の葉と花は小さ<多数集まって球形の頭花をつける。雌雄同株で、枝の上部に雄頭花、下部に雌頭花をつける。和名は、小さな果実が球形に集まった集合果をクリのイガに見たて名付けられたもの。沼沢地や流れの緩やかな水路などに生育する高さ0.5~1・5mの多年草である。北海道から九州に分布し、アジアに広く分布する。環境省の準絶滅危惧種に指定されている。葉は互生2列、線形、基部は葉鞘となる。三綾形であり、根元に近い部分の断面は明瞭に三角形であるが、上に至るほど不明瞭になり、普通の葉のようになる。花が咲いていないときにはスゲ類の葉と区別しにくいが、三綾形であることと、さわると柔らかく、スポンジ質であること、葉の先端が円頭であることなどから区別できる。

水の流れの速い小川や水深の深い場所に生育する際には葉は水中に発達したり、水面に浮かんで発達することがある。そのような場合は水上葉に比べて更に柔軟である。果実は堅果、裂開しない。外果皮は海綿質で内果皮は堅い。種子には粉質の胚乳が多く、中にまっすぐな胚がある。ミクリは昔は水田の周辺の水路などに生える普通の植物であった。湖沼、河川、水路に生育し、溜池にはほとんど生育しない。基盤整備や水路の改修、あるいは除草剤などによって少なくなってきた。地下茎は泥中にあり、茎は分枝することもある。昔は農作物などに伴って、地下茎があちらこちらに流れ着き、増える機会もあったのであろうと思われるが、コンクリート製の用水路では生育は困難である。水辺の浅水域を生育場所とするために護岸工事の直接的な影響を受けやすいが、生育に適した環境が残れば再生力は強いそうだ。ミクリの生育地は水生昆虫が生育するには好適な環境であると思う。ミクリの生育するような環境が増えてほしい。矢上川河口部では、ここ5~6年で非常に繁殖しているが、ミクリが生える環境を大切にしたいと思う。